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素材を見つける 中山景甫

ともあれ心に響くことがあると、ああそういうものかと、一人納得する。
響くひびかないはその時の心の在り方にもよるが、ひょっとすればあらかじめ心の方で聞きとる準備をしているのかもしれない。
準備が整っているときは、心に深く響いてくる。心の働きとは面白いものだ。

いけばなの素材を探す時にも、似たようなことが起こる。
素材の良し悪しはいい花が入るかどうかのかなめになるから、少なくとも必死に探している。
時にこれがなかなか見つからない。ところがひょんなことで偶然に見つかったりする。
満足した素材が得られたときは、納得できる作品になっている。
納得したというのは素材も作品もわたしの心に響いたからだろう。
そうすると偶然も全くの偶然ではなく、心の準備が整っていたからその偶然が起こったのだろう。

父がよくこんなことを言った。
「いけばなは創作だ。創作だからといって自由が許されるものではない。自分を縛るものが必要だ。」と。
今になって考えれば、自分を縛るのは「素材にこだわれ」ということだった。

良い素材と出会うために、心をいつも整えておく。

※平成24年8月 「花のいろ鋏のおと」より

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